9.手術前後その5


そうして普通の御飯の一般食が食べられるようになると、ようやく退院の2文字が見えて来ます。ひとつのバロメーターになっているようです。
でも。病院の食事ってあんまり美味しく無いんで、食欲はあまり沸きません。
余所の病院から転院して来た患者さんに言わせると、かなり美味しい部類に入るそうなんですが………どうにも。
だって、お粥のおかずが、大根の煮たのと大根の卸したのと大根の焼いたのと、ヨーグルトとかなんだもん。余程の大根好きじゃないとこれは………。
でもお腹は空いています。困った状態でした。
土曜日になると、妹がたずねて来てくれましたので、こっそりたのんで、売店で小さいカップ麺を買ってもらいました。食事制限というほどのものではないのですが、やはり消化の悪い物はさけるに越した事は在りません。でも病院の売店で売ってるんだからいいんだろうという論理で、カップ麺食べてました。美味しかったですね。泣ける程美味しかったですよ。普段そんなに食べないのに。
実は後日退院してから外でカップ麺を買って食べた所、えらく胃が痛くなってしまいまして、実際にはかなり油っぽい物を食べられなくなっている事が判明。
やはり病院のカップ麺は厳選されていたんだと思った次第ですよ。


すっかり忘れていた手術時の病理検査の結果が上がって来ました。
リンパには転位していなかったけれど、腫瘍は悪性でした。癌の進行にはランクが在るそうで、私は90%問題ない「1」でした。
聞いた話では、腫瘍が出来て5〜10年経ってるんじゃないかと言われていたのに。
運がいいのか悪いのか判りませんね〜


そして退院が確実に確定したので、点滴をようやく抜きます。
点滴台は前屈み状態の身体のバランスを保つのに、すごく役立ってくれたのですが………外れてみると、なんというこの自由の素晴しさよ! という感じです。自由に手足をのばせるし、倒しそうになって慌てる事もありませんからね。得に胸にカテーテルを入れる場合は縫い込んでますから、倒したら一緒に転ばないと、最悪、動脈から噴水ですよ(笑)。これから点滴入れる方はおきをつけ下さい。


本当は退院しないでそのままストーマ除去手術してもいいんじゃないかと医者が提案したのですが、私にど〜しても外せないイベントがありまして、その為だけに一時退院する事にしました。
本当はこんな体力の無さじゃ、除去手術は半年後になるかもと言われていたのに、術後はさかさかと、医者も拍子抜けした程早く回復。もうこれだったらそのまますればいいでしょうと言われたんですが………。僕はどうしても行きたい所があったのさ。たとえストーマつけてでも。(ぶっちゃけ有明3日間のあの盛大な真夏のお祭りですよ!)


で、決まってもすぐには出してもらえません。
抗癌剤を患部に入れるんです。4日間毎日。手術の時にすでに腹腔ポートという丸いものを腹に埋め込まれていまして、そこから一気に流し込みます。
これは癌なら皆やってるそうでして、患者さんの中にはたくさん経験者がいらっしゃいました。
でも、抗癌剤は癌の種類によっても違うし、副作用も人によりけり。
私と同じ大腸癌なのに、ある人は気持ち悪くなって食欲が無くなると言うし、ある人は便秘になると言うし。人によって全然違うみたいです。
私の場合は、ろっ骨が痛くて痛くて、何で?! という感じでした。
一日目には何も無かったのですが、二日目の途中から徐々に胸辺りの骨が鈍痛してきて、その日は終った後もなんかずっと痛いんです。で、三日目も始めた所、史上最悪の痛さに見舞われまして「もう出来ないっ」と途中で止めてもらいました。さすがに四日目は医者にブーイングされながらもキャンセルしましたですよ。痛くって死む〜と。
本当はその後の免疫とかに関わるので、四日間きちんと全ての薬を投与しなければいけないそうなのですが、その病院では全て患者の方が意思決定をする方針で、嫌だと患者が言えばそこで終らせて貰えるのです。
結局ろっ骨の痛みはあと二日程続きましたが、どうにかこうにか退院できました。



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